私が関わった多くの現場の中で、最強にして最悪な職場が最初に勤めた会社から派遣された部署でした。

 そして、一番楽しかったのもこの現場だったと思います。
 時期は、バブルが弾けたすぐ・・・。世間的には、システム投資をこれから行うと思っていて予算が組み込まれ始めた頃です。

 仕事は途切れる事なく舞い込んできます。

 その部署で作って売っていた物は、一式で買えば1億円程度はする物です。
 それが月に何台かは売れていくのです。実際にはリース契約なのはわかっていますが、羽振りが良くなっていくのは当然の事です。

 世間的なバブルが弾けてからが、IT業界のバブルの開始だったのです。

 そんな部署ですが、上司がいるわけではなかったのです。
 実際にはいましたが、いるにはいました。あぁいましたね。

 部員の数は、私を含めて15名。
 全員が独身者で構成されていました。

 そんな楽しい職場の一週間を覗いてみる事にしましょう。
 注意事項があります。実際の会社でこんな事をしたら首になるでしょう。首にならないまでもかなり怒られます。

 これは、バブル時期という特殊な状況下で、特殊な人物たちが勝ち取った、特殊な環境だと考えてください。

---月曜日
 この会社では、月曜日の朝1(9:00)に定例になっているミーティングが行われます。
 社員や関係会社の全員の参加が義務付けられています。

 よほどの理由が無い限り、ミーティングに参加する事になるのですが、私が属していた部署の人間は、私を含めて”殆どすべての人間”が、ミーティングに参加しません。参加しない理由は、予定を書いておくホワイトボードにかかれています。

『徹夜明け。午後出社』

 連絡のホワイトボードには、名前の横にかすれた文字で書かれています。
 書くのも面倒になって、印刷した紙を貼り付けるようになっています。

 月曜日の朝から”徹夜明け”である可能性は低いと皆が思うのですが、実際に作業をしていた事を示す客観的な証拠もあるので文句を言ってくるのは事情を知らない上役だけです。

 私達は、午後には出社してきます。
 昼前に入って、昼は食堂に行きます。独身者にとって昼にご飯が低価格で食べられるのは必須な事なのです。

 そして、午後から通常業務を行うのです。なんの問題も無いはずでした。

 しかし、いつの間にか私達に事情を合わせて、定例のミーティングの時間が月曜日の昼2時からになったのです。

 変更されるのはいいのですが、昼2時という時間は他の社員からも不評でした。
 13時から作業を開始して1時間で作業が中断されるのはいいことではありません。そして、昼ごはんを食べて眠くなる時間帯です。それならば、後ろが決まっている時間にすべきなのです。

 上役たちを得意の政治力を使って動かします。こうして、朝1(9:00)だった打ち合わせが昼2時なって11時に変更されたのです。

 昼前に打ち合わせが終わらないと、部署全体から恨まれるので、上役たちも昼前に終わらせるように努力してくれます。
 早く終われば、10分や15分で業務がなにか進むわけではないので、早めに食堂に移動する事ができます。空いている時間に食堂を使えるので、部署内からも好評になったのです。

---火曜日
 月曜日からの連続勤務です。
 月曜日の11時から火曜日の25時(水曜日の午前1時)くらいまで勤務します。電車がなくなっている事が多いの、そのときには会社の近くにある飲み屋に生きます。その飲み屋は29時まで営業しているので、よく使っていました。

 始発までいる事ができる上に仮眠をとっても問題ないのはこの店だけだったのです。
 店に入って、軽く食事をして飲んで眠いものから仮眠をとる。始発の時間になったら起き出して帰っていく、支払いは誰かがしています。大抵は、ツケにしておいて部署でまとめてお金を集めて店側に渡します。

 多いのは迷惑料でとっておいてほしいと告げれば問題はなかったのです。

 こんな事が続けば、ツケ払いも簡単にできます。でも、部署の人間たちはツケが好きではないので、店長に相談してデポジット式にしてもらったのです。
 もともとは、ボトルキープをしていなかった店にボトルキープを始めてもらって、そのボトルを頼んだときにはデポジットから引かれていくシステムになったのです。これで心置きなく火曜日に飲んで帰る事ができたのです。

---水曜日
 結果的に前日は朝帰りです。
 そのために、水曜日は午後出社です。

 出社時間は問題にならないような仕組みです。
 そういうのも、フレックスタイム制でして、コアタイム(居なければダメな時間)は13時から15時だったのです。ですので、午後から出社しても仕事が遅れたり客との打ち合わせに遅れるような事がなければ文句は言われません。

 出社時間が遅ければ当然の様に帰る時間も遅くなります。
 終電を逃す事が多くなります。ただ、水曜日は飲み屋が定休日なので、仮眠を取ってから帰るような事ができません。必然的に、職場で作業を行いながら始発を待ちます。

 作業は沢山あります。
 バックオーダーも大量にあり、それらをさばく為にも私達の残業は会社にとってもありがたい事だったので、深夜残業が付いても文句を言われません。早く来て作業をしろと言われた事もありませんでした。
 その結果、基本給を深夜残業代が越えてしまった事がありました。残業代ではありません。深夜残業代だけで基本給を越えていました。基本給が安かったという落ちは有ったのですが、驚異的な金額が振り込まれた事が多々ありました。

---木曜日
 水曜日の結果から、そのまま出社することもありますし、客先との打ち合わせが入るのも木曜日が多いのです。

 木曜日は、土曜日と日曜日のシステムの使用許可を申請する期限でもあるのです。

 土日の申請をしていて、使わなければ文句は来ませんが、申請をしないで使うと文句が来ます。
 開発に使っているシステムが大型汎用機と言われる機械なのです。開発機と呼ばれる物を使っていまして、CPUの利用時間の優先度が割り振られているのです。土日は、それらを顧客の為に使うので、開発に使うメンバーがいると割り振りを変更する必要が有ったのです。
 そのために、申請を行います。
 開発している汎用機なら自由に使えますが、実際にはそれだけでは手に負えない場合があります。その時の為に、申請を行っておきます。外部処理のバッチを流す為に開発機を使う事の方が異常なのですが、外部の情報を処理すると、処理した時間で料金を請求できるので、開発部員が少ないときにはよく行うのです。
 私たちは、それをバイトと呼んでいたのですが、大型汎用機のバイトはよく行われていたのです。

 木曜日は、客先との打ち合わせを行う事が多いので、22時前には帰る事が多くなります。

 早く帰られるのは問題では無いのですが、早く帰られるときに、二人以上で同時に帰ろうとしたら問題が発生します。
 二人以上になったら自然と飲みに行く流れになってしまいます。デポジットをしているので、お金が無いときでも飲み食いができます。そして、先に帰った者が飲み屋にいると解ると徐々に合流して人が増えます。
 4人で同時に帰ると、今度は飲み屋の上にある雀荘に場所が移されます。
 予約なしでも入る事ができる場所なのです。

 1人で帰らない限り、飲みに行くか麻雀をするか・・・。もっと人数が集まってしまうと、ボーリングやダーツなどの遊びにでかけてしまうのです。

---金曜日
 作業の調整に為に、雀荘や飲み屋から出社する事が多い曜日です。
 この職場なのかわかりませんが、職場にはシャワールームもありますし、実際にはあまり使われていませんが、仮眠室もあります。

 笑いながら言った話しで、”無いのは常識だけ”という事が笑い話しになるくらい異常な状態だったのです。

 金曜日には、作業のまとめと報告書を提出しなければならないのです。
 納品が近くなるとチェックがうるさくなるので、うるさくなる前に納品してしまう事もよくあります。

 個人的な作業がない場合やチームで作業が無い場合には、他の部署を訪ね歩いて作業を聞きます。スケジュール次第では手伝いのチームを派遣する事もあります。
 実は、私たちの部署が傍若無人だろうと、大企業の中に有って愚連隊の如く振る舞っても苦情が一部の上役だけしか来ないのは、自分たちの仕事が原因でプロジェクトが遅れたり火を吹いた事が無いことは、当然として他のチームや部署の仕事を率先して手伝って回る事があるからなのです。
 ヘルプを行って他の部署の情報や業務を把握する事がチームの今後に役立つ事がわかっているので、誰も文句は言いません。

 金曜日は、終電で帰ることが多くなります。他の部署にヘルプに出ている者は、その部署の業務時間に合わせますが、料金(派遣料)が発生するわけではないですし、勤務時間を先方に点けるような事はしません。あくまで、自分の部署の仕事として作業を行います。

---第二金曜日(土曜日)
 申請しているので、部署内の殆どの人間が集まります。

 実は、この火が部署のミーティングが行われるのです。来ない人が居ても問題はありません。部署内では隠し事がもともとなくミーティングの内容は飲み屋のデポジットの金額や雀荘にあずけている金額の確認などが含まれているのです。
 しっかり仕事の報告会もしていたのですが、定例のミーティングが月曜日の11時行われるようになってから、土曜日のミーティングは部署内の意思確認や作業以外の部分で困っていることがないかの確認になっていました。

 土曜日は、業務を続けるのもいいですし、仕事を行うためのツールやアプリケーションを作ってもいい時間としています。
 業務が遅れているときや新たに入っていそうな業務を先行して行う為に使う事もあります。

 会社側は一切ノータッチです。
 業務で使う為のツールと言っても個人的に作業を楽にする為の物です。土曜日に出てきて作るような類のものでは無いかも知れません。しかし、会社は黙認していたのです。

 実際の所、作成したアプリケーションやツールは他の部署で使用されたりしているのです。

 そして、他の部署でも使用して要望や障害報告が上がってくる事も有りました。業務時間中に作ったものではないという理由で即時対応や使えないと文句を言われたらソース一式を渡して自分で直せという場合も有りました。待ってくれている人たちや要望が納得できる物なら、土曜日に出て来て修正する事にしていたのです。
 土曜日は各々が好きな事をして適当な時間に帰ります。土曜日ばかりは、麻雀にも飲みにも行きません。独り者だけの集団でしたので、洗濯・掃除を行わなければならないからなのです。

---第三金曜日(日曜日)
 なぜか、日曜日
 職場に出て来ています。それも、夕方位から・・・。
 仕事が遅れている場合には、業務を行いますが、遅れる事は殆どありません。ほとんどの場合は、ツールやアプリケーションの開発です。

 そんな事で、やはり出社していたのです。
 自分で使う為の物を作っているので時間を忘れてしまいます。終電を逃す事も多々あります。そんな時には、雀荘や飲み屋で時間を潰して朝になってから家に帰ります。

 そして、月曜日を迎える・・・。