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また飼育小屋掃除の順番が回ってきた。ウサギの小さなフンや食べ残しのエサをほうきで集める。
入り口のところにためていたゴミ袋はいっぱいで、仕方なく今日も焼却炉へ捨てに行く羽目となった。
近づくと、ゴミ袋を持つ手が緩んだ。
柊碧人がいたからだ。
恋人ごっこをしてほしいと言われた日と同じように、あの告白の現場を再現したみたいに焼却炉の前にたたずんでいた。
違うのは女の子の背中はしゃんとしていて、自信があるといってるみたいで、彼は頭ひとつ高いから、少し見下げるような、だけど感情を知られたくないといったような表情は変わらなかった。
彼のことを忘れていたわけじゃない。見ないようにしていた。それだけだ。
震える足が忌々しくもある。引き返そうと思ったけど、立ち尽くしてしまう。
しばらくして、女の子が目の前を走っていた。その肩越しにいた柊碧人と目があった。
「ごめんなさい。ゴミ捨てるの待ってましたよね?」
「……」
「美優さん」
「碧人……」
「待ってて」と言って、近づくとゴミ袋を持っていき、焼却炉に捨ててくれた。
話したかった。
会いたかった。
哀しみがあるのに、そういう感情がしっかりわたしの中にはあって、悲しくなる。タケちゃんは怒って一人で死んでしまったのに、わたしの心はこんなに自由だ。
それが悲しい。悲しくて仕方ない。ごめんなさい、タケちゃんと叫びたくなる。