放課後、バスを待ちながら、タケちゃんはもうこのバスに乗ることもないんだなと当たり前のことを考えていた。

行動ひとつひとつにタケちゃんを重ねて見ると、どれも空虚で、自分は一体なにがしたいのかわからない。

駅前行きのバスが停まる。
これに乗る予定ではなかったのに、朝聞いた噂話が気になり、わたしは乗り込んだ。
流れる景色を見ながら、この予感が当たらなければいい、ならば確認なんかしなければいいのにという矛盾の言葉ばかりが浮かんでいた。

駅前で降りて、デパートの地下のお惣菜コーナーに行くと、おばさんがレジの奥に立っていた。
わたしに気が付いて笑みを浮かべたので、お母さんに買い物を頼まれたことにして、お店の一番人気だというサラダを購入した。

おばさんは、タケちゃんが亡くなったことを知っているんだろうか。じっと見ていると、不思議そうな顔でわたしを見た。

「どうしたの?」
「あっ、あの、この前、おばさんに会ったってタケちゃんから聞いたから。なんか思い出しちゃって」
「え?」

レジを打つ手が止まると、おばさんは言葉を探すように、僅かに沈黙してから困ったように苦笑いをした。

「あの子、美優ちゃんにそんなこと話すのね。怒ってた?すごく怒らせてしまったから」

目頭が熱くなった。タケちゃんが怒っていたのかなんて、もう誰も聞けない。

そしてゆっくり理解していく。あの噂話はきっと本当で、おばさんはなにも知らない。
耐えながら、イメージして答えた。

「タケちゃんは、わたしにはそういう気持ち……ムカつくとか悲しいとか、なかなか言わないから。分からないです。でも、穏やかな顔で話してましたよ」

そう伝えると、おばさんは少し安心したように頷いた。