帰り道は、まぶたが重くて痛いくらいだった。

わたしとタケちゃんの歩調は約束した訳じゃないのに、ゆっくりと揃う。
なのに周りを見る余裕もなく、ただ行きと同じ道を歩いているとは思えないほど、暗く、しんみりした寂しさを感じていた。

わたしの家の前に着くと、タケちゃんは明るく言った。

「俺さ、大学は県外って決めてるから。安心して」
「安心って言わないで」

そんな風にいうタケちゃんが悲しかった。自分をどれだけ悪いように思っていたんだろう。その一言で伝わってくる。今まで言わないから、わかんないと思っていたタケちゃんの気持ち全部が。

「だって、近くにいたら、怖いだろ」
「怖くなんかない」

わたしが強く言い切ると、タケちゃんは
「俺ね、本当に美優のこと愛してた。俺なんかが生まれてきた意味があったんだなって、思えるくらい。ありがとう」と笑って言った言葉は、胸の中を一瞬くすぐらせると、すぐに寂しさに変わった。

どうして堂々と自分を否定するの。わたしは関係ない。タケちゃんの人間性に、わたしは関係ない。

わたしはその言葉に見合った返事ができなくて、ただ頷いた。

それだけで満足そうにタケちゃんは微笑んだ。この笑顔も遠くなってしまうんだ。そう実感する。

タケちゃんの自信を奪ったのは、わたしなのかな――。

だって、わたしは、タケちゃんと向き合わないで、取り繕うことしか出来なかった。それにタケちゃんは気づいて、自分を悪く思うようになった。

ごめんなさいと衝動的に言いたくなったけど、別の言葉が浮かんで口をつぐんだ。