自分の脈が主張するように波打つ。だけど笑顔を作って「お願いします」と答えた。

そう答えると、タケちゃんはわたしの頭を撫でた。受け入れてもらったんだと理解して、強ばっていた身体が少し緩んだ。

もう何も気にしない。タケちゃんと一緒にいればいいんだ。それがわたしの答えだと飲み込む。

タケちゃんは笑うと、
「ごめん。嘘だよ」

「えっ?」
「美優が俺に対して気持ちがないのは、もう随分前からわかってた」
「……」
「ずっと縛っていて、ごめんな。どうしても一緒にいたかったんだ。ずっと甘えて、すごい傷つけた。ごめんな。謝っても、償えない気さえしてる。ごめんな」

不意をつかれた。心のガードが緩んでいて、感情の粒が零れ抑えられなくなる。唇を噛むと、嗚咽が漏れた。

「……ん」

俯くと、太ももにぽたぽたと滴が零れた。

わたし、ずっと泣きたかった。
本当は、タケちゃんが泣いた日、わたしだって一緒に泣いてしまいたかった。だけど泣くことで、タケちゃんを傷つけるのも一人にさせてしまうのも怖かった。彼が死んでしまいそうだった。代わりに自分を殺すことが正しいと思ってしまった。

だって、わたしは、傷つけられるのも、ひとりになるのも怖い。だから、いつも周りばかり気にして、自分のことを知らない振りしてしまうんだ。

「タケちゃん、わたし、美優だよ。小豆じゃないよ」

頭を優しく撫でるその手を嫌って、嫌って、愛そうとして、でも心地いいのは、本当はタケちゃんがわたしを大事にしたかったことを知っているからだ。不器用すぎる手はわたしを守りたくて仕方ないのに、それが出来ないと躊躇っていることもなんとなくわかっていた。

「タケちゃん、ごめんね」

涙が止まらなくて、わたしは、タケちゃんの名前を何度も何度も口にした。