近くの公園に着くと、人気もなく静かだった。夜に目は慣れてきて、街路樹と月明りも手伝い、そんなに怖くはなかった。ベンチに腰をかけてしばらく他愛ない話をしていると、沈黙が落ちた。
すっとタケちゃんの手がわたしの手に重なると、躊躇うように触れる。わたしが顔を向けると唇が重なった。目を開けると改めたようにわたしの名前を呼んだ。
「なあ、美優」
「ん?」
「好きな奴できた?」
その問いかけに身体が固くなった。
一瞬、柊碧人が浮かんで、そしてすぐに悲しくなった。放課後の出来事がわたしの心をずっと曇りガラスを見ているみたいにすっきりさせないからだ。
「できないよ。なんで?」
「ほら、学校でよく見かけてたから、一年の男といるの」
「違うよ。あれは友達みたいなもんだよ」
「じゃあ、美優、俺のこと好き?」
「……きだよ」
声が掠れて、すが上手に出なかった。もう一度、好きだよと言った。
「俺、みずほと別れたんだ」
どくんと心臓が跳ねた。
「えっ?」
「美優のことが好きだから」
ずっと待っていたはずの言葉だった。タケちゃんが、わたしに初めて好きと言ってくれた日のように、好きと言ってくれるのを待っていたはずだった。
そして、じゃあ付き合おうかってなって、それから数年して、もしかしたら結婚とかするかもしれなくて、そして、わたしとタケちゃんはなんのわだかまりも罪悪感もなく幸せになれるんだ。
そう思っていたのに、ただわたしを動揺させるだけだった。
「みずほに悪いと思ったけど、あいつとは美優を忘れるために付き合ったんだ。でもなんかダメで。一年も一緒にいたのに、何も思えなくて。だから、別れたよ」
「びっくりした」
「俺と付き合って」
真剣なタケちゃんの表情から、淀みのない心が伝わってくる。