「触るなよ」
「ごめんなさい」

何に対して謝っているのか自分でも分からなくなった。触れたことのようで、小豆のことのようで、気持ちがないということのようで、だけど本当はこんなわたしを軽蔑しないで欲しいとでも言ってるようでもあった。

「どうしていいかわかんなくなる。俺、今、美優のことめちゃくちゃに傷つけたいと思ってるよ」

一瞬で、わたしはベッドに押し倒されていた。

「タケちゃん、待って」

重い体が重なると、タケちゃんの唇がわたしに触れた。それからのことはよく覚えていなくて、ただ荒々しくてぎこちない時間が過ぎていくのをじっと待っていたように思う。

終わった後、泣いていたのはわたしじゃなくて、タケちゃんだった。
男の人の涙を見るのは初めてで、泣くことってあるんだと思った。鎖骨を濡らす彼の涙の中には後悔や懺悔が混じっているようで、わたしを苦しくさせた。

「タケちゃん、大丈夫だよ。一緒にいるから」と、わたしは抱きしめていた。

さっきまですごく怖かったのに、そう言えたことが、今思うと不思議で仕方ない。だけど、そのときは、放っておいたら、タケちゃんは簡単に死んでしまいそうだと思った。だから、彼のことを放っておいてはいけない。それが正しいことだと信じた。