そう。わたしの初恋はタケちゃんだった。
たぶんきっと幼稚園とかそのくらいの話で、ずっと好きなわけじゃなかった。
それから、小学校、中学校と学年が変わると共に、好きな人は何人か変わった。
だから、タケちゃんは、時間と共に何人かいる幼なじみのひとりになっていたんだ。
なんでも出来て、女の子にも人気があるから、自慢のとはつけたくなるけど。
中学2年生のあの頃は、ただそんなタケちゃんがわたしを少し特別扱いしてくれる気持ちが嬉しくて、タケちゃんに会いに行っていたようなものだった。
あの夏祭りに誘われた日から、タケちゃんの気持ちは知っていた気がするけど、気づかない振りをしていたのもそのせいだった。
「初恋なだけ?」
うんって言いたいのに、その声のトーンの低さに驚いて頷けなくなる。
さっき怒ったタケちゃんを見てしまったせいかもしれない。わたしもあの壁のように扱われたりするのかなという怖さもこみ上げてくる。
そっか、違うんだなって、タケちゃんは自嘲めいたように笑った。
「美優がさ、俺んちに遊びに来るようになって、嬉しかった。
もしかして、美優も俺のこと少しは好きとか思ってくれるようになったのかなって、勝手に期待してた。
もういいよ。行って。
俺、なにするかわかんない」
わたしは、タケちゃんを傷つけてるんだと自覚する。落ち込んでいたタケちゃんを更に追い詰めようとしているみたいで、すごくひどいことをしている気がした。
「ごめん。タケちゃん」と、肩に触れると、手を払われた。