「……ごめんなさい」

もう一度謝ると、タケちゃんは少し冷静になったようで、だけど生気の抜けた表情は変わらなかった。

「ごめん。美優はなにも悪くない。……ただあの人、小豆の世話なんか全然しなかったから、今頃、どこかに捨てられたりでもしてるんじゃないかと思ったらかわいそうで」
「そうだったんだ」

わたしは本当にタケちゃんちのこと、何も知らないんだと思った。
いつも綺麗な格好で外を歩いて、わたしに優しく笑みを浮かべながら挨拶をしてくれるおばさんしか知らないんだ。
小豆の世話は全然しなくて、タケちゃんがあの人と呼ぶことなんかも知らない。

俯いて少し丸くなった背中が、すごく悲しそうに見えて、隣に座ってさすった。
ごめんね。ごめんねって、心の中で何度も謝りながら。

タケちゃんは顔を上げると、

「美優」
「ん?」
「好きだよ」
「えっ?」
「ずっと好きだった」
「……」
「ずっと一緒にいてくれる?」

そういったタケちゃんの目が、少し怖かった。

わたしが昔好きだった男の子が成長して、きっと昔の面影しか残していないせいだと思う。あの頃のタケちゃんとは違うってことがはっきりわかるくらい、わたしだって成長していた。

「えっ……と、わたしの初恋は、タケちゃんなんだよ」