だから、やめようって言ったのに。
今さら後悔しても遅かった。自業自得だけど、見られていたなんて思いもしなかった。
武山右京(タケヤマウキョウ)は、わたしのひとつ年上の幼馴染の名前だ。
幼稚園から、高校までずっと同じ学校。家は近所で、家をふたつ挟んだところにある。
『初恋は、タケちゃんなんだよ』とわたしが告白したのは、もう3年も前になる。わたしがまだ中学3年生の頃の話だ。
そのときのタケちゃんは高校生になって学ランからブレザーに制服が変わったせいか妙に大人びて見えた。
まさかその告白をした日に、彼と初体験をすますなんて思いもしなかった。
『タケちゃん』と心で呟く。よく呟く。
そうすると少し安心した気持ちになる。
タケちゃん。
右京って名前が嫌いなタケちゃん。
幼稚園の頃から、みんなにタケちゃんと呼ばせていたタケちゃん。
高校生になって、生徒会長なんてやってしまうくらい正義感もあるし、しっかり者のタケちゃん。
可愛い彼女がいるタケちゃん。
それなのに、わたしとセックスするタケちゃん。