中学生になると、近所の異性の友達とは遊ばなくなるのが、自然の流れだった。
ましてやひとつ上のタケちゃんとは、余計に疎遠になっていて、すれ違ったら挨拶をするくらいだった。
タケちゃんの両親の関係があまりうまくいってないという話を聞いたのは、わたしが中学2年生の頃だ。もちろん本人からではなく、お母さんがご近所さんから聞いたという噂話を伝えられただけだった。
だから急に夏休みになって、お祭りに行こうとタケちゃんから誘われたときはびっくりした。
「いいけど。誰か誘う?」
「いいよ。人数多いとまとめるの面倒くさいし」
「そっかぁ。わかった」
タケちゃんが、わたしの家の門を出ると突然振り返り、「浴衣着てこいよ」と少し照れくさそうな顔をしていたのが、胸を弾ませた。
お祭りの日はタケちゃんが迎えに来てくれて、電車に乗った。あまり盛り上がる会話もなくよそよそしかった。
「人ゴミすごいね」と、駅前は人でごった返しだった。
タケちゃんの後ろを着いて行くのに精いっぱいで、何度か見失いそうになる。
「美優」
「ん?」
「手」と、言って急にわたしの手を引く。緩く繋ぐものだから、はぐれそうでまた必死に着いて行く。そうすると、少し力が込められた。
タケちゃんって、男の子なんだなって思ったのはぶっきらぼうだけど、わたしを女の子として扱っているタケちゃんのそんな態度が嬉しかったからだ。
こうやって、幼なじみだったわたし達も意識しあったりするのかなって、人事のように考えた。