「というか、俺いいって言ってませんからね」と、柊碧人は唐突に言った。
「恋人ごっこが終わりだなんて」
「何を今更」
「今日も昼、待ってたのに」
「わたし、やめるって言ったじゃない。もう関係ないでしょ」
「じゃあなんでさっき、俺のこと見てたの?怒ったの?気になってることがあれば、聞けばいいのに」
「そんなこと何もない。それより、話したいことあったんでしょ。何なの?」
彼は息を吐くと、「じゃあ、少し話させて」と断りを入れ、わたしがちゃんと顔を向けると、話し始めた。
「俺のせいで靴がなくなったり、呼び出されたりして嫌な思いをさせてしまったのは、悪かったと思ってるよ。
まさかそういう被害が美優さんにまで及ぶとは思わずに、考えもなくお願いしてしまったのは俺にも責任はあると思う。
でも、美優さんが平凡だから俺と付きあうと文句を言われるなんて、俺は全く思ってないから、そういうことを当たり前のように人に言うのはやめてほしい。
むしろ美優さんは、今まで見てきた女の子とは違う魅力のある人だなと思ってたくらいだったよ。
俺の中で、女の人って自分勝手だったり、裏切ったりするっていうイメージが強かったから、武山先輩の為に、俺なんかと付き合った振りをするなんて、こういう一途な人もいるんだって、少し見方が変わったくらいにね」