柊碧人とお昼を食べなくなってから、わたしは彼に振られたと思われたのか、嫌がらせはうけなくなった。
学食にも行かなくなったし、一年生の階に行く用事もなかったから、顔をあわせることもなかった。
晴菜は大丈夫だった?と、笑いながら心配してくれて、前みたいにお昼を一緒に食べるようになった。
何かが変わったというより、前と変わらない生活に戻っただけだった。
月子だけが、「わたし、この前余計なこと言っちゃったからかな? それだったら、本当にごめんね」と、申し訳なさそうに謝るものだから、「それは違うよ。元から好かれてなかったから、付き合ったのもお試しみたいな感じだったし。気にしないで」と、明るく言った。
「でも好きだったんでしょ? 辛いよね。すぐに忘れられないと思うけど、何かあったら話してね。何でも聞くから」
月子はわたしより大人なんだと思った。失恋の痛みをわかっているようで、労わる言葉を選んで励ましてくれる。だから、余計に大丈夫と明るく言うしかなかった。
◆
真新しい上履きは足にまだ馴染まない。
だけどきっと卒業までわたしの足元にいるんだろう。そんな気がした。
少なくとも誰かに僻まれて、隠されるということはもう永久にないだろう。
放課後、一階の化学室の掃除に行った。空気を入れ替えようと、窓を開けてなんとなく外を見ると、校舎裏に有村先輩と柊碧人が向き合って話しているのが見えた。
わたしの視線に気がついたのか一瞬、彼と目が合って、慌てて背中を向けた。