「気になること?」
「うん。実はね、見ちゃったの。碧人くんが告白をしているところ。美優が彼と付き合ってるって知った日の2日くらい前だったかな?」
「えっ? 告白されてるじゃなくて?」
「うん。告白してたの。しかも相手があの有村先輩」
「有村先輩?」
「そう。三年でいちばん可愛いって言われてる、右京先輩の彼女の」
「……嘘」
「本当。すごいびっくりしちゃって。で、有村先輩も考えてみるみたいな、けっこう前向きな返事をそのときしてたから余計に驚いちゃって……知ってた?」
「知らなかった」
「でもそのあと有村先輩が碧人くんのこと振ったのかもしれないしね。何もなかったんだと思うんだけど、ただそれでも碧人くんの切り替えが早すぎるからびっくりして。余計な話だったら本当にごめんね。不安にさせたいわけじゃないからね。ただ引っ掛かってたから、言いたかったの」
「ううん。ありがとう」
「頑張ってね」
優しく笑う月子は励ますように拳を作った。
古典の授業を受けながら、ぼんやり考える。
柊碧人は彼女が欲しくないから、わたしに彼女の振りをしてほしいって言わなかったっけ。
それなのに、その前に有村先輩に柊碧人は告白していた。
なんでだろう。
そして考えさせてと言った有村先輩はちゃんと返事をしたんだろうか。
現にタケちゃんと別れていないから有村先輩はきっと、柊碧人を振ったに違いない。
じゃあどうしてその後すぐに、わたしに彼女の振りを頼んだのか。
意味はないのかもしれない。前も思ったように、わたしを脅したいだけのただの悪趣味だともとれる。
だけどすごくモヤモヤするのは、わたしと有村先輩の共通点は、タケちゃんしか浮かばないからだ。