薄いスリッパは歩きにくかった。ちょっと大きいし、ペタペタ音が響いてなんだか目立つ。
自分の席に着くと特に異変はなく、鞄を脇にかけた。
ちょっと安心した。クラス内でされたら、さすがに生きた心地はしない。

それにしても寝れなかったせいで、かったるい。一時間目古典か。余計に寝れそうと机に突っ伏した。
おはようの挨拶が飛び交って、みんなが自分の仲間みたいなのを見つけるのに朝から忙しい。
ひとりがふたり、ふたりがさんにん。
和気あいあいと、昨日見たテレビとかの話で盛り上がっている。
楽しそうですね。

「お……おはよう」

体を起こしてみると、月子が机の横に立っていた。

「おはよう」
「あ……あのさ。今、大丈夫かな?」
「うん」

月子はわたしの前の席に座ると、ちょっと辺りを気にする。晴菜がまだ来ないか確認しているようだった。それから
「まだ碧人くんと付き合ってる?」

小声で訊く。

「んー。まあそんな感じ」
「そっか。なんか言わなくてもいいかなとは思ったんだけど、どうしても気になることがあって」