「ていうかさ、わたしが、彼女の振りしてあげてることで、変わった?」
「変わった?」
「なにか変わった? 相変わらず、告白とかされてるんじゃないの?」
「ヤキモチ?」
「んなわけ……」と、怒ってみると柊碧人は、立ち止まる。
見据えるみたいな視線に戸惑って、わたしも足を止めた。
「なんか言いたいことでも、あるの?」
「うん。キスしたい」
そう言うと、人目もはばからず、わたしの唇に唇を重ねた。
唇に空気が触れて、ひんやりしてから、キスが終わったことを知る。それから、言った。
「変わったことあったよ。寂しくなくなった」
彼は「おやすみ」と、来た道を引き返していく。
誰の目も気にならないほど、頭が真っ白になるってことあるんだ。