「頭も相変わらず良くて、後輩からも人気があるみたい。あ、あと、元気にしてます」

そうなのと頷く。その顔に、タケちゃんはお母さん似だなと改めて思った。

「あの……もう遊びにこないんですか?」

顔をしかめるから、変なことを言ったと後悔するけど、もう遅かった。

「美優ちゃん、ごめんね。わたしももう新しい生活が始まってるの。だからもう会えないの」
「新しい生活」

反芻して思い浮かべた。おばさんと一緒に並ぶタケちゃんとおじさんの顔が、わたしの知らない男の子と男の人の顔に変わる。そっか、再婚でもしたんだ。だから、タケちゃんとは連絡をとっていないのかな。

色々訊きたいことはあったけど、普段家族の話なんかしないタケちゃんの顔が浮かぶと、聞かれたくないことのように思えて質問出来なかった。

「あ。じゃあ友達が待っているので行きます」と、その場を立ち去ろうとすると「あっ、美優ちゃん」と引き留められた。

「はい?」
「ここで会ったことは、秘密にしてもらってもいい?」と、申しわけなさそうにお願いするから、何か訳があるように感じて、頷くしか出来なかった。

柊碧人はエレベーター脇で、わたしが話し終えるのを待っていてくれていた。