なんでこんなとこにいるんだろう。もう近くには住んでいないと思っていたのに。
立ち尽くしていると「美優ちゃん」と、少し高めの声で呼びかけられた。その人は、タケちゃんのお母さんだった。
「やっぱり」
思わず呟いてしまった。
おばさんは、最後にわたしが見た日とあまり変わらない。ピンとした肌には、綺麗に化粧がほどこされていて、どちらかというと、前より若々しく感じた。
「こんにちは」
「びっくりした。やっぱり会っちゃうものなのね。元気? お母さんも変わらない?」
「はい。元気です。うちのお母さんも変わらないです。元気です」
「二葉高校の制服」と、わたしをまじまじと見て呟く。
「はい。タケちゃんと同じ高校に進学しました」
「あの子も二葉なの?」
おばさんが目を丸くして驚くから、わたしもびっくりしてしまう。
そんなことを知らないということは、本当にタケちゃんと会っていないし、タケちゃんの家とも縁をすっかり切ってしまったんだってただ実感してしまった。動揺を悟られないように、はきはきと答えた。
「はい。タケちゃん、すごいんですよ。今、二葉で生徒会長やってますから」
「そう」と嬉しそうに目を細めた。