「具合、悪いんですか?」
「うん。ちょっと頭痛が……碧人はなんでここに?」
「眠くて、こっちで休んでました。美優さんが来る前から」
「全然わかんなかった」
「隣で寝てると思ったら、なんか気になって寝付けなかった」
「えっ?」
「早退しません?」

そう言うと、有無を言わさない様にわたしの手を取って立ち上がらせた。

「先、行ってます」

すぐに先生が戻ってきた。柊碧人と帰りたかったわけじゃないけど、なんとなく授業に出たくなくて、試しに具合悪いふりをすると、早退の許可が降りた。
悪いことって、してみると意外に簡単で呆気ないものだと思った。

校門の前で柊碧人は涼しげな顔で待っていた。

「なんか目立つ……」
「大丈夫」と、なぜか柊碧人は余裕の笑みを浮かべた。すっと手を伸ばす。また簡単にわたしと手を繋いだ。

「外で繋がないんじゃないの?」
「今日は逆。日替わりだから」
「わたしは弁当か」
「食べていいの?」
「は?」
「弁当って言うから」
「ダ……駄目です」と、何故か敬語になる。

彼は、ふははっと笑うと、買い物に行きたいから付き合ってと、バス停に向かった。