「実はさっき告白されたんですけど、好きじゃないから付き合えないって断ったんです。そしたら、俺に彼女が出来るまで、諦めませんって言われちゃって、ちょっと困っていたんです」
「ふうん」
なんか真実味にかけるなと思った。そんなの噂によるといつものことで、しかも告白されても付き合わないらしいとまで聞いていたから、いつも体よく断ってるんじゃないのかと疑いたくなる。
だけど、所詮噂だし彼のことはよく知らないから、思っただけにして腹の中でおさめた。
「すごい自分勝手ですよね」
「……さあ。でも、昨日今日で、好きって気持ちが消えるわけじゃないから、仕方ないんじゃないのかな? そう言いたくなるのも」
片思いなんてひとりでするものなんだから、自分勝手なのも仕方ない。
好きという気持ちを受け取れないなら、それくらい、いいじゃないかってきっと言いたくなるだろう。勝手に思ってるくらいなら迷惑にならないって。
「でもはっきり言って恐いんです。たまに諦められないって変な電話がかかってきたりとか、つけ回されたりした事もありますから」
モテるのも大変なんだなと、自分には縁のない悩みをぼんやり聞いていた。
遠くで生徒の笑い声が聞こえる。
「だから先輩、俺の彼女になりませんか?」
柊碧人は、そう言った。