ふっと女の子の声が聞こえて視界が揺らいだ。自分がすっかり寝入ってしまったことに気づく。もう一時間くらい経ったのかな。

「先生いないねー」
「どうしよう。絆創膏勝手にもらってもいいかな?」

聞き覚えのあるような声だけど、顔が浮かばなかった。

「貰っちゃおうか」

ガタガタと何かを探すような音がする。

「ていうか、みずほさ」

その名前を聞いて気づいた。有村先輩だ。
わたし、いつから彼女の声まで聞き分けられる様になっちゃったんだろう。

「まだ右京くんとしてないってびっくりなんだけど」
「ちょっと声、大きいってば」

「ごめんごめん」と、声のトーンを落とすけど「でも一年付き合ってたらそろそろって思うよね」と、会話はしっかり聞き取れてしまう。

「うーん。まあね」
「あっ、あった」

絆創膏が見つかったのか、どんどん声が遠ざかり、シンとした静寂だけ残された。
けほっと咳払いが出た。
聞かなくていいことを、聞いてしまった気がした。

「美優さん」

その呼び方にドキッとする。
隣のベッドとの間にあったカーテンが開くと柊碧人が立っていた。
驚いて飛び起きてしまう。