夕食を終えた頃、タケちゃんから、メールがあった。
『家に来て』とだけ。
『いいよ』と送る。
それから、急いで彼の家に向かった。ドアが開くと穏やかな表情でタケちゃんが迎え入れてくれた。
「飯食った?」とわたしに訊いた。
「うん」
「俺、まだだった。飯、食ってもいい?」
「うん」
リビングで待っていると、近くのお弁当屋さんで買ったという野菜炒め弁当を持って、わたしの隣に座った。
「美味しそう」
「一口、食べる?」
「ううん」と、言ったのに、わたしの口の中に野菜炒めを放り込んだ。
「タケちゃん、熱いよ」
「悪い」と、笑いながら、タケちゃんもお弁当に手をつけた。
テレビではクイズ番組がやっていて、高学歴の人が難問に答えている。わたしは流すようにそれを見ていた。
「ねえ、タケちゃん」
「んー?」
「毎日お弁当、飽きない?」
「毎日じゃないから、大丈夫。たまに、外で食べるし」
そうじゃなくてと、わたしは言った。
「たまに手料理とか、食べたくならない?」
「ならないよ」
「そっか」
タケちゃんは、箸を口にくわえたまま、わたしを見た。
「なに? もしかして、作ろうと思ったの? 美優が?」
少し小馬鹿にしたように笑うのは、わたしが料理が出来ないことを知っているからだ。