「仲いいですね。いつから、付き合ってるんですか?」

校舎を出ると繋いでいた手を離した。かわりに、そんな風に柊碧人は訊いてきた。

「2年生の夏前くらいかな」
「じゃあ大体1年前か」
「そうだね。そのくらいだね」
「有村先輩から、言ったんだろうね」
「なんでわかるの?」
「なんとなく。見てたら、そんな気がする」

そして「付き合ったとき、どう思ったの?」と、わたしに訊いた。

「え?」
「あの2人が付き合ったとき、どう思ったの?」
「どう思ったって」
「だってその前から、武山先輩とは、そういうことする関係だったんでしょ?」
「なっ……」

露骨な言い方に、眉を潜めると、「図星だ」と、笑った。

「なんとなくそんな気がしただけだけど。当たりか」
「うるさいな」
「ねえ、いつから、あんな関係になったの? 昔は付き合ったりとかしてたの?」
「関係ないでしょ」
「まあ関係ないね」
「だから言う必要ない」
「でも俺、美優さんのこともっと知りたいよ?」
「わたしは言いたくないの」
「いいじゃん。恋バナ。女子は好きでしょ」
「わたし、女子っぽくないから。そんな風に言う碧人のほうが色々あるんじゃないの?」
「色々って?」
「いっぱい付き合ったりしたんでしょ。言っておくけど、わたし彼氏いたことないから。全然恋バナとかないからね」
「俺もないよ、恋バナ」
「はいはい」と信用できずに受け流す。

「中学のときは付き合ってみたこともあったけどね。どれも長続きしなかったから、恋バナにもならないよ。彼女とカウントしていいのか、わかんないくらい」
「そんなに短かったんだ」
「うん。長くて一週間」
「短かっ……」
「なんか無理だったんだ。女の子が」
「無理って、もしかして女嫌いってこと?」
「まあそんなとこ。でも美優さんとは手を繋いでも平気だったから不思議だね。付き合った子とは、手さえ繋げなかったから」と、悪びれもなく笑った。

「そう」とわたしは何と答えていいかわからず、言葉を濁した。