「謝るってことは、悪いことしたと思っているってこと?」
そう言われて口をつぐんだけど、そんなのタケちゃんのイライラを増加させるだけだってわかる。
何か言わなきゃと思うのに、急に泣きたくなってしまい、「わかんない」と言っていた。
「わかんない?」
「わかんないよ」
「なんでわからないの?」
「タケちゃんだって、彼女いるでしょ? わたしに、彼氏ができたらどう思う?」
そう言ったら、タケちゃんが急に手を緩めるものだから、びっくりした。
浴槽のへりを掴んで身体を起こした。
「彼氏?」
「……だってタケちゃん。わたし、彼女じゃないでしょ?」
彼女だったら、どれほど良かっただろう。
例えばこうして、タケちゃんは、心をえぐるような、突然の発作でも起こしたような衝撃でわたしを感情的に扱うことがある。
その理由が、わたしを愛おしすぎてしょうがないとか、わたしを失うのが恐くてしょうがないとか、わたしがもしも彼女だったら、純粋にそう思えるはずなのに。
こうされる度、わたしは、自分を守る名称という装備も武器も、なにひとつ身につけていなくて、持ってもいないことを知る。
それだけなんだ。
今のわたしは、タケちゃんから見たら、幼い頃から知ってる近所の女の子。名前を呼ばれれば、尻尾を振って飛んで来るペットみのようなものかもしれない。
そう思っているのに、わたしは、タケちゃんがどうして大切なんだろう。