「うわっ」
「そんなに驚かないでよ」
柊碧人は手に持っていた大きめのバスタオルをわたしの肩にかける。
「大丈夫、寒くない?」
「寒くない」
「シャワーでも浴びる?」
「浴びないよ。少し濡れただけだし」と、バスタオルを柊碧人に突き返した。
二人きりの家でシャワーなんか冗談でも借りたくない。なにか可笑しいのか柊碧人はクスリと笑った。
それが、不快だった。
「甘いの好き?」と、柊碧人は言った。
「甘いのは好きだけど」
「貰い物のロールケーキあるけど、食べる? 抹茶とあずきのクリーム」
からかうような言葉や態度が気にさわるけど、きっと柊碧人に敵対視を向けているわたしの反応が面白いに違いないのだと思う。
なら、できるだけ平静を保っていたくて、「わたしは、いらない」と素っ気なく答えた。
「そう。じゃあ俺もいらない」と、わたしの腕を掴むなり、柊碧人の部屋に引き入れられた。
「ちょっと……痛い」
「座って」と、わたしをベッドの上に乱暴に座らせた。まだ強くわたしの腕を握っている。