昼休みになって、鞄からお弁当と携帯を取り出して、学食へ向かった。
入口の手前に立っているのが、遠目から見ても柊碧人だとわかった。仕方なく声をかける。
「ごめん。待った?」
「待ちました」
「ご、ごめんね」
「お弁当なの?」と、わたしの手元を見て言う。
「うん」
「自分で作ってるの?」
「まさか。お母さん」
「ふうん」
そう言うと、食券買って来るから場所取っててと、券売機のほうへ行ってしまった。
長いテーブルが何列も並んでいて、窓際に二つ空席があるのを見つけて座った。
柊碧人とのご飯なんて、想像するだけで、なにも楽しくない。
お弁当を広げて、先に食べるべきか待つべきか悩んで、とりあえず手をつけないで待っていると、タケちゃんが昼食を食べているのが目に止まった。
笑っている。
同じテーブルにいるのは、確か同じクラスの友達だ。
ほっとした気持ちになったのに、タケちゃんの背後に近付いてくる女の子に気がついて、心が曇った。有村先輩だった。タケちゃんの肩を叩いて振り向かせると、楽しそうに話しだす。
そのやりとりの先を見たくなくて、わたしは俯いて、お弁当の中の卵焼きに視線を落とした。