「誰か来ちゃうよ?」
「大丈夫だよ」
「ダメだよ。大学の推薦あるでしょ?」

タケちゃんは、ごめんねというように、わたしのボブの髪に手ぐしを通した。
こうされる度、もう少し触れていて欲しくて、髪を伸ばそうと思うのだけれど、セックスの終わり以外、そう思わないせいか、未だにわたしの髪は伸びない。
もう一度、撫でて欲しかったけど、彼はそれだけでやめた。

「美優のほうが、俺の将来のこと、真剣に考えてるみたいだな」と笑った。

「そうだよ?」

わたしのほうが、タケちゃんのこと、真剣に考えてるんだよ。
そう言うと、「本当だ」と笑って体を離した。

タケちゃんは、わたしの幼馴染なのに、たまにこうやって、抱きあうことがある。
だけど、セフレというには、言葉が足りなくて。幼馴染というには、もどかしくもある。

だけど、タケちゃんには、有村先輩という彼女がいる。だから、わたしは、彼女ではない。

だからといって、有村先輩より先に、わたしタケちゃんとこんな関係を築きあげて来たのだから、浮気相手じゃ、やっぱり言葉に乏しさを感じる。

幼馴染を少し色っぽく言ってみたような関係かもしれない。
抱き合う終わりに、乱れた声で、「タケちゃん、好き」と、わたしが言うような。

きっと、そんな感じなんだろう。

タケちゃんには、そんな風に好きと言われたことなんて、ないのだけれど。