飼育小屋掃除で出たゴミを捨てに向かうと、焼却炉の前でたたずむ男女の姿が見えた。

はにかんだような彼女に向き合う男の子には見覚えがあって、すぐに名前が浮かんだ。
柊碧人(ヒイラギアオト)だ。

アッシュブラウンの髪には少しパーマがかかっていて、パーツを揃えたような整った顔立ちにはよく似合っていた。それに一年生のくせに、つい最近まで中学生だったとは思えないほど、大人っぽい。

一目でモテそうだと思ったし、実際、彼は話題の男の子になっていた。

わたしの友達の月子(ツキコ)と晴菜(ハルナ)だってかっこいいと騒いでいたし、彼を見に教室の前まで用もないのに行く女の子がいることも知っている。
だけどどうやら、それに対して愛想良く対応しているわけでもなく、どちらかというと静かな野生動物みたいにじっと身を潜めているような感じだった。

きっと今、目の前で行われているのは、告白だろう。
邪魔だなと思ったのだけれど、向かい合っている様を見ると、すみません、ゴミ捨ててもいいですか?とはどうあっても言いにくいものがあって、立ちすくんだ。

そういえば、週に何回か告白されてるらしいよとか、他の学校の女の子が出待ちしてたとか、そんなことを月子が言っていたことを思い出した。

早く終わらないかなと、非常口前の階段に腰を落とした。
足元にタンポポが咲いていて、まだ春が残っていたんだと、梅雨を迎え入れたばかりの慌ただしい空を見上げた。
明日、雨だっけ。
手持ち無沙汰はそんな朝のニュースを思い出させた。