APK は、WebView が貼り付けられているだけのアプリのようだ。
起動してみると、裏サイトが表示されるようになっていた。それだけなら珍しくもないが、IDとパスワードが自動で入力されて、裏サイトに入られるように作られていた。
そして、上下にアフィリエイトバナーが貼り付けられていて、”一日一回バナーを押してください”と、掲示板にかかれていた。
パケットを見てみると、アプリ用のアフィリエイトを行っている会社のバナーの様だ。
小遣い稼ぎをやろうとしているのか?
塾だけだと、多分、引き出せる金額になるまでにかなりの期間が必要になるだろう。絶対に、このいアプリだけじゃないだろう。アプリの性質上、Android だけなのだろうか? iPhone では審査が通らないだろうけど、アプリへのアクセスを考えると、なんらかの対策を行っていると考えられる。
調べておくか?
アプリの作者から、同じ作者が出しているアプリを見てみる。
・・・あぁ駄目なやつだったのね。
学校名が思いっきり入っているし、部活でのアプリも用意されているようだ。
考えように寄っては、賢いのかもしれないけど、もう少し名前をひねったほうがいいと思う。
これは、今回の”いじめ”とは直接関係ないけど、何かのネタにはなるだろうから、調べた結果も乗せておく。
誰なのかはわからないけど、塾と学校と部活が別れば、ある程度人物は絞れるだろう。
オヤジから着信だ。珍しい、普段ならメールやメッセージで済ますのに・・・。
「はい」
『タクミ。悪いな。今大丈夫か?』
「え?あぁ」
『パケットは見たか?』
「見た。報告書も送ったぞ」
『そうか、パケットおかしくなかったか?』
「なにが?」
『あぁそうか・・・パケットの時間を見てみろ』
オヤジに言われて、パケットの時間を眺めてみる。
これと言っておかしなところは見当たらない
「何がおかしい?」
『タクミ。パケットがログに残される原理はわかるよな?』
「あぁ」
『それならわかるだろう。ログの時刻が等間隔になっている部分が多い』
え?
言われて、時間ではなく、ログが刻まれた時刻を並べてみる。
確かに、数ミリ秒の誤差はあるが、ID・パスワードの部分や、一定間隔に並んでいる部分がある。
そうか、ログインが機械的に行われている。オヤジにはまだ言っていない情報だ
「悪い。今、ユウキから聞いて、わかった事だけど、サイトへのアクセスには、アプリが使われているみたいだ」
『そうか、認証部分をアプリがやっているのだな』
「あぁ多分、そこまでは解析できていないけど、ほぼ間違い無いと思う」
『そのアプリは手元にあるのか?』
「ダウンロードしたから、端末から抜き出せば、渡せる」
『報告書に、アプリも添付して送ってくれ、こっちで調べる』
「わかった。俺は、未来さんへ報告を出しておく」
『頼む。みらいには、俺からも話を通しておく』
その後は、今日も帰ってこないが告げられて、電話が切れた。
オヤジの会社のアカウントに、報告書と一緒にAPKを送る。
後は、オヤジが調べてくれるだろう。
確かに、今までパケットだけを見ていたけど、パケットの時間にまで気を使っていなかった。人間が操作しているのに、間隔が一定なのはおかしい。アクセスログを見る時にも言える事だろうな。
さて、俺も風呂入って寝る事にしよう。
なんだかんだで疲れてしまった。
---
「タクミ!タクミ!いつまで寝ているの?ミクさんのところに行くって言っていたよね」
朝から、ユウキの声で起こされた。
確かに、行く約束はしている・・・・が、夕方だ!
「夕方だから、まだ早い!」
「お腹空いた!」
「冷蔵庫の中に何か有るだろう?勝手に食べろよ」
「ええぇぇタクミが作ってよ!」
いつもこうだ・・・。
休みの日に泊まっていくと、なぜか俺に作らせる。自分でも作れるのに、なぜ俺に作らせる。
作らなければ、作るまで言い続ける。
「はぁ・・・わかった、何が食べたい」
「美味しいもの!」
美味しいものって言われるのが一番面倒だ
「どのくらいお腹空いている?」
「マックス!」
「米とパンは?」
「うーん。今日は、パンがいいかな」
「甘い?辛い?」
「甘い!」
うーん。朝から、甘い物・・・かぁフレンチトーストでいいか
「生クリームは?」
「いらない。あっアイスがいいかな」
はいはい。バニラアイスは、まだ有ったはずだから、フレンチトーストを甘さ控えめにして、バニラアイスをつけよう。
それなら、そんなに手間がなくていい。4枚切りのパンしか無いけど、まぁいいかな。
卵と牛乳を混ぜて、砂糖を少し少なめに入れて、パンを浸してから、フライパンに並べていく。
片面に焦げ目が着いたら、ひっくり返して、余った卵液をパンに吸わせる。更にひっくり返すときに、バターをフライパンに落としておく。
バターの焦げる匂いがしてきたら、フライパンから皿に盛り付ける。
アイスをスプーンで掬って、パンの真ん中に置いていく。その上から、メイプルシロップをかけておく。
飲み物は、コーヒーでいいかな。ユウキは、紅茶の方が好きだから、紅茶を用意しておけば文句は言われないだろう。
テーブルにおとなしく座っている、ユウキの前に出来上がった、フレンチトーストを置いていく、俺は朝から甘い物はあまり受け付けない。自分用には、ただ焼いただけのトーストを用意した、バターを塗って食べる。
「美味しぃい!!」
満足してくれたようだ。
「タクミ、ミクさんのところには、何時に行くの?」
「16時の約束」
「そう、タルトを買いに行く必要があるから、13時くらいに出ればいいよね?」
「は?」
「約束したでしょ?タルトを買っていくって!」
約束?
ん?
「あぁ・・・わかった、13時じゃ早くないか?」
「ううん。早くないよ。その前に、街中で買い物しよう!」
「買い物?」
「うん!だって、今回の報酬は、タクミからもらえって、おじさんに言われたし、ミクさんからも、タクミが払うって言われたよ?」
フレンチトーストを口に頬張りながらとんでもないことを言い出す。
まぁ確かに、報酬を払うくらい問題は無いが、なぜ付き合わなければならない。現金で渡せばいいだろう?
”ぶーぶーぶー”
メールが着信した。暗号化されているメールが。開くと、2通来ているのがわかる。
「ユウキ。ちょっとまって、メールが来た」
「うん。わかった」
ユウキは、食べる事に集中するようだ。
メールは、桜さんと美和さんからだ。暗号メールとは珍しい。手元の端末だと復号できないから、部屋に戻って復号する事にした。
何か重要な事でもわかったのか?
まずは、桜さんからのメールだな。
『タクミ。この後、美和からメールが行くと思うが、無視していいからな!』
え?これだけ?
美和さんからのメールを復号する。
『タクミ。今日、ユウキとデートするそうですね。話はユウキから聞きました。しっかり、ユウキのエスコートをお願いします。多少遅くなっても構いません。ユウキは、素直になっていないだけです。現金を渡して終わりにしないように、タクミは、旦那や克己くんの悪いところを真似しないように、ユウキは、あなたと買い物に行くのが報酬だと思っています。いいですか、今日一日、ユウキに付き合いなさい。返事は不要です』
なんだかな・・・。デートを勧める母親・・・。買い物くらい付き合ってやるよ。面倒だけど・・・。
リビングに戻ると、ユウキはフレンチトーストを食べ終えて、冷凍庫に有ったアイスを取り出して食べていた。
「タクミ。メール何だったの?」
「あぁ桜さんと美和さんから、今日ユウキに付き合ってくれってさ」
「へぇーーなんで、タクミにいうのかな?」
「知らないよ。俺に聞くなよ。それでどこに行く?」
「うーん。秋物がほしいかな。しまむらとかに行きたいけど、車が無いと難しいよね?」
「そうだな。先輩呼び出してもいいけどな。向こうも、昨日の話を聞きたいだろうからな」
「いいの?」
「あぁ聞くだけなら”ただ”だろう?」
すぐに、連絡を付けた
間髪入れずに返事が来て、会長がOKなら迎えに行くという事だ。
10分後に、着信があり、会長だ。
『タクミくん。どういう事?』
「おはようございます。どういう事とは?」
『え?あっおはよう。そうね。落ち着かないとね。それで、梓から電話が有って、タクミくんからのお誘いだっていうことだけど、なんでなの?』
「ユウキに報酬を払う約束をしていて、そのための買い物に付き合ってほしかったのですよ。昼ごはん程度ならおごりますし、この前の話も気になっているのでしょう?」
『そう言われると、断りにくいわね。いいわ。梓と行きますね。お昼ご飯と、おやつで手をうちましょう』
「ありがとうございます。お待ちしております」
『えぇタクミくんの家に行けばいいの?』
「えぇお願いします。ユウキも居ますので、近くで連絡いただければ、ユウキが迎えに行きます」
『へぇ一緒なの?へぇぇぇ梓!聞いて!』
「そういう会長も、副会長と一緒だったのですね」
『え?あっそれじゃ後でね』
逃げたな。ま、一緒だと思ったのだけど、10分って時間は少し微妙だな。
気にしてもしょうがないか、仲良くやっていると思う事にしておこう。財布の中身を確認して置こう。少し心もとないから、少し補充しておくか、たしかオヤジから渡されている分が有ったはずだ。
「タクミ。美優先輩から、近くまで来たって連絡が入ったよ」
早いな。
もう少しかかると思ったけどな。
「わかった。ユウキ。悪いけど、誘導してくれ、オフクロ居ないから、駐車場空いていると思うからな」
「了解!」
なぜ、俺の家に、ユウキの”外に出られる”格好の服が一式置いてあるのかわからないが、すぐに着替えてきている。
俺もちゃっちゃっと着替えて、服のセンスに一切自信がないから、マネキンが着ていた物を引っ剥がして着る事が多い。今日も、夏用のジャケットに、下は7分のズボンを履いて、インナーにTシャツを着たラフな格好になる。どうせ、未来さんのところで着替える事になるのだから、これでいいだろう。
着替えて、リビングに戻ると、ピンクのフリル一杯のワンピースを着た会長と、男装を着こなしている副会長と、ボーイッシュな格好をしているユウキが待っていた。
「へぇキミは休日はそんな格好なんだね」
「おかしいですか?それなら、電車の終着駅にあるビルの5Fに入っている店の店員に文句を言ってください」
「梓先輩。タクミは、マネキンの服を真似しているだけですよ」
「そうか、どうりで、服は合っているのに、キミに合っていない、チグハグな感じなのだね。よし、キミの服もユウキと見繕ってあげよう。いいよね」
「はぁ構いませんが・・・それよりも、会長はどうしたのですか?」
さっきから一言も発していない。
「あぁキミ。気にしないでくれ、美優は、僕が選んだワンピースが気に入らないようなのだ」
「へぇぇぇそうなのですね」
「タ、タクミくん。別に、私が普段からこんな格好していると思わないでね。今日はその・・・そう、特別なだけだからね」
「はい。はい。わかっていますよ。制服しか着るものがなくて、しょうがなく、副会長が用意したワンピースを着てきたって所でしょう?」
「なっなっなんで」「ほぉキミ。なんでそう思う?ユウキが同じだからか?」
俺と副会長は目線をあわせて、笑った。笑ったつもりだが、お互いに引きつっていたのだろう。ユウキは何を言われているのか気が付かない雰囲気だったが、会長は耳まで赤くして、うつむいてしまっている。
副会長が、会長を抱き寄せて、耳元で何か囁いてから、さらに赤くなってしまっている。何か思い出したのだろう。
「それで、キミ。どこに行きたいのだね」
「そうですね。ユウキへの報酬なので、ユウキが行きたいところですが、ユウキはしまむらでいいの?」
「そういう事なら、ユウキ。僕に、任せてもらえないか?君に似合いそうなブランドが有るのだが?」
「タクミ。いい?」
「副会長。いいですか?一般的な高校生が着てもおかしくないブランドですよね?間違っても、会長が着ているようなブランドではないですよね?」
「おかしいかい?」
「いえ、すごくお似合いだとは思います。思いますが、高校生が着るブランドではないと思いますよ?」
「ほらぁぁ梓!タクミくん。もっと言ってあげて、梓。下着まで・・・あっ」
盛大に自爆している。
「大丈夫だよ。キミなら、払える金額の店だからね。それに、ユウキなら着こなせると思うし、少し大人っぽい服も持っていていいだろう?」
「はい。はい。何を言っても駄目なのでしょう?」
ここで言い争っていてもしょうがないので、移動する事になった。
副会長は、軽快に目立つ車を走らせている。会長は何もいわないで助手席に座っている。
連れて行かれた場所は、ショッピングビルだ。入っているブランドを見てみて、検討をつける。1階にある、スペインのアパレルメーカーが展開する店なのだろう。駐車場に車を止めて、店舗に向かう。想像通りの店に連れて行かれた。確かに、ここなら高めの値段だが、ユウキに似合いそうな物は有るだろう。
起動してみると、裏サイトが表示されるようになっていた。それだけなら珍しくもないが、IDとパスワードが自動で入力されて、裏サイトに入られるように作られていた。
そして、上下にアフィリエイトバナーが貼り付けられていて、”一日一回バナーを押してください”と、掲示板にかかれていた。
パケットを見てみると、アプリ用のアフィリエイトを行っている会社のバナーの様だ。
小遣い稼ぎをやろうとしているのか?
塾だけだと、多分、引き出せる金額になるまでにかなりの期間が必要になるだろう。絶対に、このいアプリだけじゃないだろう。アプリの性質上、Android だけなのだろうか? iPhone では審査が通らないだろうけど、アプリへのアクセスを考えると、なんらかの対策を行っていると考えられる。
調べておくか?
アプリの作者から、同じ作者が出しているアプリを見てみる。
・・・あぁ駄目なやつだったのね。
学校名が思いっきり入っているし、部活でのアプリも用意されているようだ。
考えように寄っては、賢いのかもしれないけど、もう少し名前をひねったほうがいいと思う。
これは、今回の”いじめ”とは直接関係ないけど、何かのネタにはなるだろうから、調べた結果も乗せておく。
誰なのかはわからないけど、塾と学校と部活が別れば、ある程度人物は絞れるだろう。
オヤジから着信だ。珍しい、普段ならメールやメッセージで済ますのに・・・。
「はい」
『タクミ。悪いな。今大丈夫か?』
「え?あぁ」
『パケットは見たか?』
「見た。報告書も送ったぞ」
『そうか、パケットおかしくなかったか?』
「なにが?」
『あぁそうか・・・パケットの時間を見てみろ』
オヤジに言われて、パケットの時間を眺めてみる。
これと言っておかしなところは見当たらない
「何がおかしい?」
『タクミ。パケットがログに残される原理はわかるよな?』
「あぁ」
『それならわかるだろう。ログの時刻が等間隔になっている部分が多い』
え?
言われて、時間ではなく、ログが刻まれた時刻を並べてみる。
確かに、数ミリ秒の誤差はあるが、ID・パスワードの部分や、一定間隔に並んでいる部分がある。
そうか、ログインが機械的に行われている。オヤジにはまだ言っていない情報だ
「悪い。今、ユウキから聞いて、わかった事だけど、サイトへのアクセスには、アプリが使われているみたいだ」
『そうか、認証部分をアプリがやっているのだな』
「あぁ多分、そこまでは解析できていないけど、ほぼ間違い無いと思う」
『そのアプリは手元にあるのか?』
「ダウンロードしたから、端末から抜き出せば、渡せる」
『報告書に、アプリも添付して送ってくれ、こっちで調べる』
「わかった。俺は、未来さんへ報告を出しておく」
『頼む。みらいには、俺からも話を通しておく』
その後は、今日も帰ってこないが告げられて、電話が切れた。
オヤジの会社のアカウントに、報告書と一緒にAPKを送る。
後は、オヤジが調べてくれるだろう。
確かに、今までパケットだけを見ていたけど、パケットの時間にまで気を使っていなかった。人間が操作しているのに、間隔が一定なのはおかしい。アクセスログを見る時にも言える事だろうな。
さて、俺も風呂入って寝る事にしよう。
なんだかんだで疲れてしまった。
---
「タクミ!タクミ!いつまで寝ているの?ミクさんのところに行くって言っていたよね」
朝から、ユウキの声で起こされた。
確かに、行く約束はしている・・・・が、夕方だ!
「夕方だから、まだ早い!」
「お腹空いた!」
「冷蔵庫の中に何か有るだろう?勝手に食べろよ」
「ええぇぇタクミが作ってよ!」
いつもこうだ・・・。
休みの日に泊まっていくと、なぜか俺に作らせる。自分でも作れるのに、なぜ俺に作らせる。
作らなければ、作るまで言い続ける。
「はぁ・・・わかった、何が食べたい」
「美味しいもの!」
美味しいものって言われるのが一番面倒だ
「どのくらいお腹空いている?」
「マックス!」
「米とパンは?」
「うーん。今日は、パンがいいかな」
「甘い?辛い?」
「甘い!」
うーん。朝から、甘い物・・・かぁフレンチトーストでいいか
「生クリームは?」
「いらない。あっアイスがいいかな」
はいはい。バニラアイスは、まだ有ったはずだから、フレンチトーストを甘さ控えめにして、バニラアイスをつけよう。
それなら、そんなに手間がなくていい。4枚切りのパンしか無いけど、まぁいいかな。
卵と牛乳を混ぜて、砂糖を少し少なめに入れて、パンを浸してから、フライパンに並べていく。
片面に焦げ目が着いたら、ひっくり返して、余った卵液をパンに吸わせる。更にひっくり返すときに、バターをフライパンに落としておく。
バターの焦げる匂いがしてきたら、フライパンから皿に盛り付ける。
アイスをスプーンで掬って、パンの真ん中に置いていく。その上から、メイプルシロップをかけておく。
飲み物は、コーヒーでいいかな。ユウキは、紅茶の方が好きだから、紅茶を用意しておけば文句は言われないだろう。
テーブルにおとなしく座っている、ユウキの前に出来上がった、フレンチトーストを置いていく、俺は朝から甘い物はあまり受け付けない。自分用には、ただ焼いただけのトーストを用意した、バターを塗って食べる。
「美味しぃい!!」
満足してくれたようだ。
「タクミ、ミクさんのところには、何時に行くの?」
「16時の約束」
「そう、タルトを買いに行く必要があるから、13時くらいに出ればいいよね?」
「は?」
「約束したでしょ?タルトを買っていくって!」
約束?
ん?
「あぁ・・・わかった、13時じゃ早くないか?」
「ううん。早くないよ。その前に、街中で買い物しよう!」
「買い物?」
「うん!だって、今回の報酬は、タクミからもらえって、おじさんに言われたし、ミクさんからも、タクミが払うって言われたよ?」
フレンチトーストを口に頬張りながらとんでもないことを言い出す。
まぁ確かに、報酬を払うくらい問題は無いが、なぜ付き合わなければならない。現金で渡せばいいだろう?
”ぶーぶーぶー”
メールが着信した。暗号化されているメールが。開くと、2通来ているのがわかる。
「ユウキ。ちょっとまって、メールが来た」
「うん。わかった」
ユウキは、食べる事に集中するようだ。
メールは、桜さんと美和さんからだ。暗号メールとは珍しい。手元の端末だと復号できないから、部屋に戻って復号する事にした。
何か重要な事でもわかったのか?
まずは、桜さんからのメールだな。
『タクミ。この後、美和からメールが行くと思うが、無視していいからな!』
え?これだけ?
美和さんからのメールを復号する。
『タクミ。今日、ユウキとデートするそうですね。話はユウキから聞きました。しっかり、ユウキのエスコートをお願いします。多少遅くなっても構いません。ユウキは、素直になっていないだけです。現金を渡して終わりにしないように、タクミは、旦那や克己くんの悪いところを真似しないように、ユウキは、あなたと買い物に行くのが報酬だと思っています。いいですか、今日一日、ユウキに付き合いなさい。返事は不要です』
なんだかな・・・。デートを勧める母親・・・。買い物くらい付き合ってやるよ。面倒だけど・・・。
リビングに戻ると、ユウキはフレンチトーストを食べ終えて、冷凍庫に有ったアイスを取り出して食べていた。
「タクミ。メール何だったの?」
「あぁ桜さんと美和さんから、今日ユウキに付き合ってくれってさ」
「へぇーーなんで、タクミにいうのかな?」
「知らないよ。俺に聞くなよ。それでどこに行く?」
「うーん。秋物がほしいかな。しまむらとかに行きたいけど、車が無いと難しいよね?」
「そうだな。先輩呼び出してもいいけどな。向こうも、昨日の話を聞きたいだろうからな」
「いいの?」
「あぁ聞くだけなら”ただ”だろう?」
すぐに、連絡を付けた
間髪入れずに返事が来て、会長がOKなら迎えに行くという事だ。
10分後に、着信があり、会長だ。
『タクミくん。どういう事?』
「おはようございます。どういう事とは?」
『え?あっおはよう。そうね。落ち着かないとね。それで、梓から電話が有って、タクミくんからのお誘いだっていうことだけど、なんでなの?』
「ユウキに報酬を払う約束をしていて、そのための買い物に付き合ってほしかったのですよ。昼ごはん程度ならおごりますし、この前の話も気になっているのでしょう?」
『そう言われると、断りにくいわね。いいわ。梓と行きますね。お昼ご飯と、おやつで手をうちましょう』
「ありがとうございます。お待ちしております」
『えぇタクミくんの家に行けばいいの?』
「えぇお願いします。ユウキも居ますので、近くで連絡いただければ、ユウキが迎えに行きます」
『へぇ一緒なの?へぇぇぇ梓!聞いて!』
「そういう会長も、副会長と一緒だったのですね」
『え?あっそれじゃ後でね』
逃げたな。ま、一緒だと思ったのだけど、10分って時間は少し微妙だな。
気にしてもしょうがないか、仲良くやっていると思う事にしておこう。財布の中身を確認して置こう。少し心もとないから、少し補充しておくか、たしかオヤジから渡されている分が有ったはずだ。
「タクミ。美優先輩から、近くまで来たって連絡が入ったよ」
早いな。
もう少しかかると思ったけどな。
「わかった。ユウキ。悪いけど、誘導してくれ、オフクロ居ないから、駐車場空いていると思うからな」
「了解!」
なぜ、俺の家に、ユウキの”外に出られる”格好の服が一式置いてあるのかわからないが、すぐに着替えてきている。
俺もちゃっちゃっと着替えて、服のセンスに一切自信がないから、マネキンが着ていた物を引っ剥がして着る事が多い。今日も、夏用のジャケットに、下は7分のズボンを履いて、インナーにTシャツを着たラフな格好になる。どうせ、未来さんのところで着替える事になるのだから、これでいいだろう。
着替えて、リビングに戻ると、ピンクのフリル一杯のワンピースを着た会長と、男装を着こなしている副会長と、ボーイッシュな格好をしているユウキが待っていた。
「へぇキミは休日はそんな格好なんだね」
「おかしいですか?それなら、電車の終着駅にあるビルの5Fに入っている店の店員に文句を言ってください」
「梓先輩。タクミは、マネキンの服を真似しているだけですよ」
「そうか、どうりで、服は合っているのに、キミに合っていない、チグハグな感じなのだね。よし、キミの服もユウキと見繕ってあげよう。いいよね」
「はぁ構いませんが・・・それよりも、会長はどうしたのですか?」
さっきから一言も発していない。
「あぁキミ。気にしないでくれ、美優は、僕が選んだワンピースが気に入らないようなのだ」
「へぇぇぇそうなのですね」
「タ、タクミくん。別に、私が普段からこんな格好していると思わないでね。今日はその・・・そう、特別なだけだからね」
「はい。はい。わかっていますよ。制服しか着るものがなくて、しょうがなく、副会長が用意したワンピースを着てきたって所でしょう?」
「なっなっなんで」「ほぉキミ。なんでそう思う?ユウキが同じだからか?」
俺と副会長は目線をあわせて、笑った。笑ったつもりだが、お互いに引きつっていたのだろう。ユウキは何を言われているのか気が付かない雰囲気だったが、会長は耳まで赤くして、うつむいてしまっている。
副会長が、会長を抱き寄せて、耳元で何か囁いてから、さらに赤くなってしまっている。何か思い出したのだろう。
「それで、キミ。どこに行きたいのだね」
「そうですね。ユウキへの報酬なので、ユウキが行きたいところですが、ユウキはしまむらでいいの?」
「そういう事なら、ユウキ。僕に、任せてもらえないか?君に似合いそうなブランドが有るのだが?」
「タクミ。いい?」
「副会長。いいですか?一般的な高校生が着てもおかしくないブランドですよね?間違っても、会長が着ているようなブランドではないですよね?」
「おかしいかい?」
「いえ、すごくお似合いだとは思います。思いますが、高校生が着るブランドではないと思いますよ?」
「ほらぁぁ梓!タクミくん。もっと言ってあげて、梓。下着まで・・・あっ」
盛大に自爆している。
「大丈夫だよ。キミなら、払える金額の店だからね。それに、ユウキなら着こなせると思うし、少し大人っぽい服も持っていていいだろう?」
「はい。はい。何を言っても駄目なのでしょう?」
ここで言い争っていてもしょうがないので、移動する事になった。
副会長は、軽快に目立つ車を走らせている。会長は何もいわないで助手席に座っている。
連れて行かれた場所は、ショッピングビルだ。入っているブランドを見てみて、検討をつける。1階にある、スペインのアパレルメーカーが展開する店なのだろう。駐車場に車を止めて、店舗に向かう。想像通りの店に連れて行かれた。確かに、ここなら高めの値段だが、ユウキに似合いそうな物は有るだろう。