さて、有志のレベルがわからないけど、パソコンが触れる素人と仮定しよう。
1年も混じっているだろうし、プログラムはほぼ無理だろう。ネットワークの授業もまだ始まっていないだろう。しまったな。津川先生に聞いておけばよかった。
多分、OSは、Linux系統を入れさせるつもりなのだろう。
いくつかのディストリビューションを持っていこう。RedHat系とDebian系とSlackware系だな。CUIで困らないようにしておこう。
さて、学校でのセキュリティの勉強会をかんがえないとならない。時間も無いし、本番を想定した感じにしていくしかないな。
6名で1チームにして、5チームを作る。大会には、4チームで参加する。
学校なら、Windows Server のライセンスもあるだろう。
5チームにLinux と Windows Server を起動してもらって、去年のサービスと俺が用意するサービスを起動してもらうようにする。
サーバに使うために用意されるパソコンのスペックがわからないけど、2時間でサービス起動まで持っていければいいかな?
CUI で、OSを起動して、サービスをセットアップする。
できれば、全てソースから対応させたいな。
ルータが市販の物なら、1台のパソコンにNICを追加してルータにしたほうがいいだろう。
6名で1チームを作って、全部で5チームを作る。4チームが防御を行って、1チームが攻め続ける。
これを、10回行えば、方向性も見えてくるし、攻めが得意なチームと防御が得意なチームの色も見えてくるだろう。
大会には、防御を2チームと攻撃を1チームとバランスがいい1チームで向かう。1チームの6名は一番大事な連絡係だ。6名は引率だ。スマホを持ち込めるのなら、連絡は出来る。ザルだな。スマホがダメと言われた時のために、サイトを用意した方が良いだろう。暗号化されたサイトにアクセスを行って、そこで情報共有を行うのは出来るだろう。レギュレーションには書かれていない。当日に禁止される可能性はあるが、抜け道と言えば抜け道だろう。
方針は、決まったな。
サービスは、いくつか用意していくか?
それほどいやらしい設定をしているとは考えられない。有名所のスクリプトが動けば大丈夫だろう。
コンパイルしたモジュールを動かすのは、趣旨と違ってくるからな。ソースコードを読み解くとなると、また違った技能が必要になってくる。
「ねぇタクミ?」
「ん?」
「そのセキュリティの勉強会?大会?で、僕が出来る事はある?」
「荷物の運搬とかならあるけど・・・」
「うん。僕、タクミのサポートだね」
「そうだな」
近づいてきた、ユウキを抱き寄せてキスをする。
「タクミ。僕、先に寝るね」
「あぁ今日中に書き上げたいから、秘密基地で寝るかも」
「わかった。明日、起こしに来てね」
「了解」
「タクミ。おやすみ」
「おやすみ」
ユウキが寝室に戻る。心配はしてくれているのだろう。
さて、Linux の ディストリビューションをそれぞれ用意しよう。全部サーバモードがあれば十分だ。Webサービスと起動確認用だな。
最初は、全員で2台をセットアップする。
そして、サービスを起動できたら、2台に全員で攻撃する。
ディストリビューションの種類だけやってから、Windows Server でも行って、から、各チームに分かれての練習だな。
提案書にまとめていく、有志諸君のレベルがわからないから、まずは様子見だな。
初期段階はクリアして欲しい。
大会で戦えない。せっかく出るのだから、勝ちに行く。攻撃を担当しているチームは、負けるのが前提だけど、それは承諾してもらうしか無い。
基本の作戦を考えよう。
読んだレギュレーションから感じたのは、攻撃主体に思えるが、堅実で堅牢なシステムの構築が求められる。より早く正確に行えば、いいだけだ。攻撃なんてBOTに嫌がらせを行わせる程度で十分だ。
津川先生からメールが届いた。
どうやら、大会中はスマホやタブレットは持ち込めないと言われたようだ。NICは許可が降りたようだ。ただ、パソコンのケースを開けるような物は許可出来ないようだ。そりゃぁそうだな。それが許されるのならメモリを増やしたり、HDDを付けたりするだろうな。俺ならする。
俺のテクニックは、オヤジから叩き込まれた。運用がベースだからな。学校とかの授業や勉強には向かない。
初期段階は、サービス起動まで2時間を目標にしよう。
同時に、攻撃ツールの準備を2台で行って、1台を監視用にセットアップ。
Windows は、順番を間違えなければ大丈夫だろう。
大会まで、1ヶ月と4日。1ヶ月だと思っておいたほうが良さそうだな。
どこまで消化できるか・・・。
提出する前にもう一度読み込めばいいだろう。
寝室に戻ると、裸でユウキが寝ていた。この娘は、俺にどうしろというのだ?女の子が全裸で大の字になって寝るか?見るのは俺だけだからいいけど・・・。
ユウキを少し横に動かして、ユウキの横に潜り込む。横に入ったら抱きついてくる。いつものことだ。ユウキの体温と甘い匂いを感じながら目を閉じた。
「タクミ!」
「ん?あぁユウキ。おはよう」
「タクミ。僕、お腹がすいた!」
「そうか、昨日は大将の所で食べただけだったな」
「うん!」
「わかったけど、ユウキ。服を着ろよ。それに跨るな!」
「えぇだって・・・」
「”だって”じゃないよ」
「うぅぅぅ」
「ユウキさん?それに、朝ごはんを食べるのだろう?学校に遅れるぞ?」
「わかった。タクミ。今日は遅いの?」
「どうだろう?学校からの依頼に関しての話をするからな。ユウキも、今日はバイトだろう?」
「うん。遅番だから、一度家に寄ってから病院に行く」
「わかった。なるべく早く帰ってくるよ」
「うん!僕も、今日は餌やりと掃除だから、それほど遅くならないよ」
「それじゃ終わったら連絡をくれよ。俺も、学校を出るときに連絡をいれる」
「わかった!」
ユウキが俺の上から降りる。リビングに移動して、朝食の準備を始める。
ユウキがシャワーを浴びてリビングにやってくる。簡単に、コンソメを使ってスープを作って、玉ねぎとソーセージを具として加える。ユウキの分には、タマゴをいれる。
耳を落としたパンの片面を焼いてから、フライパンに玉子を落としてからベーコンをかぶせる。玉子が半熟になったら、パンの焼いていない面に乗せる。そのままオーブンで1分加熱して出来上がり。ヨーグルトにハチミツを入れてから牛乳を入れて撹拌する。俺は、紅茶をいれる。美和さんから貰った物だ。
食べ終わった食器は軽く水洗いしてから食洗機に入れておく。
学校の授業はいつもどおりに終わった。
授業の終わりに、戸松先生に呼び出された。
パソコン自習室に向かった。中から男女の声が聞こえてくる。有志が集まっているのだろう。
実習室の隣にある教員室をノックする。
「篠崎です」
「入ってください」
扉を開けて中に入ると、津川先生も来ていた。
「篠崎くん。計画書は読みました。時間も無いので、篠崎くんの計画で進めます」
「わかりました。俺は、サポートをすればいいですか?」
「そうですね。篠崎くんと私で攻撃を行いましょう」
「わかりました。毎日ではありませんが時間を作るようにします」
「お願いします」
「それで、何人、集まったのですか?」
「30名です。男子生徒20名と女子生徒10名です」
「6名のチームにはなっていますか?」
「男子4名と女子2名で組んでいます。基本は、クラス別になっています」
「そうですか、良かったです。研修所の部屋割もありますから、ベストは割り振りですね」
「そう言えば、そうですね。津川先生もいいですか?」
「問題はありません」
「それでは、パソコン実習室に移動しましょう」