母と結婚してください。

 全ては僕のせいだ。有事の時、詩織がそう考えてしまったのだ。そう感じさせる態度やら物言いなどが出てしまっていたのだろう。だから、リコの部屋で記入した婚姻届は、せめてもの詩織への罪滅ぼしだった。

 僕の配慮が足りていれば。そこまで考えて、何が成功で何が失敗なのか分からなくなる。

 目の前にリコがいるからだ。

 詩織への配慮が足りていれば、リコは生まれなかったことになる。僕はリコと出会うこともなく、僕がリコを愛することもなかった。