母と結婚してください。

「……何、言ってるの。意味分かんない」

 プイッとリコが顔を背けるのを見た次の瞬間には、リコを抱きしめていた。背中に回した腕にも自然と力が入る。

「お願いだから、もうどこにも行かないでくれ」

 ショートカットの髪の毛から少しだけ見えている耳に口元を当てていた。"もう"は詩織に向けて言った言葉でもある。