母と結婚してください。

 でも、そんなの認めるわけにはいかない。もう二度と、大切な相手を失いたくない。どうしてリコに惹かれるんだろうと不思議に思っていた。でも、種を明かせば簡単なことだった。リコの遺伝子の半分は、僕のあずかり知らない男のものだ。でも、残りの半分は、やはり――詩織のものなのだ。

 正直、顔はそんなに詩織に似ていない。でも、その立ち居振る舞いや仕草や物言いは、確かに詩織を彷彿とさせるものがある。初対面なのにどこか懐かしいと思っていた。食事に行った時、リコが選ぶものが分かってしまうことだってそう。