母と結婚してください。

 公園の暗がりに詩織を引きずりこんだ男。その結果、リコはこの世に生を受けたという事実は皮肉以外のなにものでもない。

「血筋なんだろうね、私が最低なことしちゃうのは」

 詩織という母親の存在を知ってから、リコはどれほどもがき苦しみ、この宿命と戦ってきたのだろう。

「止めろ……止めてくれ」

 僕は必死に首を横に振った。一番辛いのはリコ自身だ。そんなことは分かっている。