母と結婚してください。

「分かるでしょ。私はあなたと一緒にはいられないことくらい」

 リコは僕の方を見て、何度も首を横に振る。リコはいつも前を向いている。良くも悪くもポジティブで、多少、失敗をして落ち込んだとしても、すぐに立ち直る強さを持っていた。出会った頃、仕事で失敗をして、相談された時だってそう。最初こそ落ち込んでいたとしても、飲んでいくうちにハイテンションとなり、最後はお祭り騒ぎになっていた。この子は強い子なんだ。心配するどころか、感心したことを覚えている。

 でも、今のリコは違う。明るくなる兆しなんて微塵も感じさせない。未だかつてこれほど悲しいリコの顔を見たことはなかった。