母と結婚してください。

 告白したものの、最初は、生みの母親のことは勇気が出せず話せなかったのだそうだ。日記やらアルバムを目の前に晒しておいて、それでも尚、なかなか口を開けなかった。

「何度も何度も聞いて……ようやく実の母親の話を聞いた時は、なんて可愛そうな人なんだろうって思いました。婚姻届も捨てられなくて、きっとずっと一人で寂しい思いしてきたんだろうなって。そう思うと、申し訳なくって……。それまでなんとなくで生きてきたのに、この話を聞いたら、もう……そんな生き方はできないなって思いました。母は私を命を懸けて産んでくれたんです。私の命は――ううん、私のこれからの人生は、半分は母のものだと思ったんです。半分は母にくれてやろう。母と二人で幸せになってやろうって。結局、一度も会話すらできなかったけど、どうにかして、一つくらい恩返しがしたいなって思ったら……」