母と結婚してください。

「無理を言ってるのは分かっています。あなたの気持ちを考えれば頼めるはずもないことも。でも、お願いします。この婚姻届に記入してやってください」

 既にこの世にいない人間だ。こんな婚姻届を書いたところで、何の意味もなさない。それでも、母の最期の願いを叶えたいとリコは言う。完成させた婚姻届を仏前に供えたいのだと。

 始めは支離滅裂に思えたリコの告白も、話が進むにつれ、徐々に一本の繋がりが見えるようになっていった。詩織に愛されていたことが分かった。病院での態度も、その時、彼女が口にしていたことも、全て嘘ではなかったのだと納得だって出来た。