出張にいく前日でさえ、詩織の態度は変わらなかった。退院したらすぐに追っかけるから。頑なにそう言い続ける詩織を、ここで待つように説得するのは並大抵のことではなかった。

 たくさん写真撮ってきてね。それを見て、一緒に行った気になるんだから。納得したのか詩織はそんな条件を出してきた。うん、分かった。たくさん写真撮ってくるから。僕の返事に、ゆっくりと詩織は頷いた。早く帰ってきてね。絶対に浮気したらダメだからね。うん、大丈夫。詩織しか見てないから。若い二人の約束だった。指きりげんまんもした。針千本飲ます約束だってしたのだ。

 ――それなのに。どうして。