座ることもなく、抱きつかれることもなく、部屋に入ったすぐのところで僕もリコも立ち尽くしていた。玄関先で僕はリコの斜め後ろからの横顔を見つめていた。

「話って……」

 時間が止まったかのような沈黙に、窒息しかけていた僕は、リコに話を促す。
 
 いつになく真面目なリコの顔。部屋に入って、二人きりになったからと言って変化はない。リコが僕の方を振り返る。お酒を飲んでいるから、少し頬は赤みがかかっている。それでも目はしっかりとしていた。決して、酔った勢いで真面目な話、だなんて言ったわけではないことだけは分かる。