「真面目な話があるの」

 でも、違った。そんなんじゃなかった。いつになく真剣にリコに見つめられ、僕は嫌とは言えなかった。

「ここで聞くよ」

「聞いてなかった? 真面目な話だって」

 部屋についてこいと言う。さすがにそれはまずいと思った。部屋に入ってしまったら二人きりだ。誰の視線に晒されることもないし、誰に遠慮だってする必要がない状況だ。タクシーの中のようにイチャイチャされたら、拒むだけの自信がない。リコのことは好きだ。大切にだって思っている。