こら、止めなさい。リコにとっては軽い気持ちだ。子供のする悪戯のようなもの。あしらってもあしらっても、リコは止めない。ますますキャキャと騒ぎ出す始末だ。

 そんな二人のやり取りに、運転手もきっと大いに妄想を掻き立てられたことだろう。行き着く結果も、分かってしまう。上司の部下の隠された愛。木曜10時のドラマのような、ドロドロな人間模様。

 今日のリコは少々酔っていた。タクシーからの引きずり出したのはきっとリコの気まぐれに違いないと、そう思っていた。適当に話に付き合って、僕はそのまま大通りに出て、タクシーを拾い直そうとさえ考えていたのだ。これ以上、若いリコに付き合ってはいられない。