一つため息を付き、恨めしげにタクシーを姿に目をやる。赤く光るタクシーのテールランプ。しかしすぐに角を曲がってしまい、見えなくなってしまった。発進する直前にニヤリと笑った運転手の顔が目に焼きついていた。

 僕はもう一度、大きく息を吐き出した。

 40代のおじさんと20代の女の子。親子というには馴れ馴れしすぎるやり取りをタクシーの中で繰り広げてしまっていたのだから無理もない。リコがこちらの肩に首を預けてくる。腕も絡めてくる。タクシー運転手の視線がルームミラー越しに合った。ニヤリと笑っている。まずい。そう思って、腕を引き抜こうと引っ張るものの、リコは難してくなない。そればかりか、きっと運転手の視線に気づいていて、あえてこちらの首筋にキスをしてきたりもした。