ほら、早く早く。僕の袖を持ってピョンピョンと飛び跳ねる。

 静かだったのに、数台の車が通りすぎていく。歩行者だってそこまで多くはないが、それでも何人かの姿は見えている。40も越して、ここでキスをする勇気なんて持てない。躊躇っているとリコに睨まれた。

「やっぱ私のことなめてるよね?」

 必死に首を横に振る。そんなことないって。でも、この場所じゃあ……。

「そんなの関係ない。いつまでも待たせないで。早くして。ねぇ、早く!!」