今一度、チャンスが貰えたことを理解するのに、少し時間が必要だった。間違いなく別れを切り出されると信じて疑わなかったから、どういう顔をして、どういう態度を取って、そして、どういう言葉を投げかけたらいいのかさっぱり分からない。

「……ごめん」

 考えて考えて――情けないことに必死に考えても、それしか言葉に出来なかった。頭を下げようにも、リコに抱きつかれているのだから体を曲げようもない。何とも窮屈で、ぎこちない謝罪になってしまった。