もうリコはいないと思っていたのに、店を出たらすぐのところに彼女の姿があった。

 店のドアのすぐ近くの電信柱に背中を預けて、スボンのポケットに両手を入れて星を見上げていた。僕の好みに合わせてくれたショートカット。綺麗な耳が見えている。少しだけつり上がった目は、何度見ても大きいなと思う。

 店の前のそこまで大きくない通りには、この時間になるとそれほど交通量はない。歩行者だってまばらだ。どこからか音楽が聞こえてくると思ったら、リコが口ずさんでいるのにようやく気づいた。名前は忘れてしまった。以前、一度だけ借りたアーティストの曲だということだけは分かった。