サヨナラを言われることも辛いが、サヨナラの一言も言ってくれなかったことも胸に沁《し》みた。どうしてあんなことを言ってしまったのだろうかという少しばかりの後悔と、そう思うなら、何でもっと自信を持って、リコとの距離を縮められなかったのだろうかという自責の念が入り混じって、口の中が妙に埃っぽく感じられた。

「ごちそうさま」

 会計をしてくれた女性店員にそう言葉を残し、店を出た。しばらくこの店に来ることはないだろうな、なんて考えていた。