母と結婚してください。

 それでもヘコヘコと頭を下げ、僕は急いで、踊り場から上へ駆け上がる。階段を折りかけたリコの目の前に立ち、段ボールを受け取った。

「ありがと。さぁ、さっさと運んで」

 この階段を降りようとしているということは、向かう先は資料室に違いない。

 リコは大きくなってしまったお腹を手で支え、階段から降りる時の衝撃から守ろうとする。お腹に添えるリコの左手の薬指には、指輪が輝いている。そして同じものが僕の薬指にもあるのだ。