呼び止められて、振り返るとそこにはほっぺたを膨らませたリコの顔があった。少しだけ釣り上がった、でもクリッとした黒目がちな目が、こちらの顔を捉えている。眉間に皺が寄っている。リコが本気で起こっている証拠だ。

「どうしたの?」

 たじろいだ僕は、そう言い返すしか方法が思いつかなかった。それでも彼女の反応がない。ごめん。僕、何かした? 慌ててそう付け加える。

「どうしたの、じゃないでしょ。何かした、でもない。何度も何度も呼びかけてるのにムシするから怒ってんの」