「──鳳凰柄っていうのはね。」

 苺は、てきぱきと小物を片付けながら言った。

「鳳凰はね。六星一座の中でも、甲本家の当主しか着れない、特別な図柄なのよ。」

「へぇ…どうして?」

「鳳凰が出現する時、天子が誕生すると言う伝説があるからよ。天子とは、つまり《神子》を指しているの。」

 成程。神子を輩出する家柄ならではの図案なのか。

良く解ったが、それにしても…。
袴の足元が、何やらスースーする。
平素、スカートすら履いた事の無いボクにとって、この開放感は少なからぬ衝撃だ。

 それに何故、今夜は和服を着なければならないのか?何か、特別な意味があるのだろうか??

 ……いや。
深く追及するのはよそう。
考え出せばキリがない。

 着替えが終わると、苺は屋敷中を案内してくれた。いろいろ教えて貰ったが、広すぎて一度では到底覚えられない。

 多分──迷うだろう。
後で、もう一度教えて貰った方が良いかも知れない。

 そうして。廊下で祐介に呼び止められるまで、ボクらは、ずっと一緒に居た。

本当は、苺が男だという事実を確認したかったのだが…彼女は何やら急用が出来たらしく、祐介に伴われて母屋に向かった。