高く腕を拱(コマネ)く様子は、アニメのヒロインそのものだ。

 これ以上機嫌を損ねないよう──ボクは、慎重に言葉を選んで彼女を取り成した。

「ごめんなさい。近頃、人の親切に餓えていたから勘違いしちゃって…」

「親切に餓えていた??」
「…昨日から、人間不信に陥っています。」
「昨日から?それはまた随分と急な話ね。」

「はぁ、色々ありまして…。恐らく、突発性の人間不信ではないかと…」

 詳しい事情を訪ねられては困るので、曖昧に言葉を濁してみる。

 ──刹那。彼女は唖然とボクを見詰めた。
それから、突然弾ける様にケラケラと笑い始める。

「あは、あははははははは──!! やだもう、何言ってるの?? 可笑しな人ね、あなた。最高に笑えるわ!!」

 …甲高い笑い声は、いつまでも止まなかった。女の子は、ベッドの端をバンバン叩いて腹を抱えている。

心底可笑しそうに、体を九の字に曲げて──。

 ボクは、徐々に鼻白んだ気分になった。
彼女の言う通り。どうやらボクは、とんだ思い違いをしていたらしい。

的外れな言い訳をしたのは、確かに此方の早とちりだ──だが。見ず知らずの人に、ここまで笑われる謂(イワ)れは無い。